『チャスキ』 54号 『インカの世界を知る』 |
2016年12月
桜井 敏浩(会員)
『インカの世界を知る』
木村 秀雄・高野潤 岩波書店(ジュニア新書) 2015年11月 194頁 960円+税 ISBN978-4-00-500819-3 ¥¥
アマゾンやアンデスに詳しい人類学者と写真家が若い世代の人たちに書き下ろしたインカの解説書。「第1部 インカを知る」(木村)ではインカ国家とはいかなるものかから入り、インカがどこから来たか、なぜインカ国家は「帝国」と呼ばれるのか、インカとは誰のことかなどを明らかにし、インカ国家の拡大、変質、征服、その手段であった贈与と再分配などの歴史を概観し、次いでインカの経済を支えた自然環境、インカ以前のアンデス文明、農牧畜業、農牧畜儀礼を説明し、インカと現在の先住民文化の解説で締めくくっている。
「第2部 インカを知るための10の視点」(高野)は、インカの太陽信仰が行われた神殿や儀礼・神託が行われた聖所、城塞都市、高度な水利用技術とアンデネスの農業、カパック・ニャン(インカ道)網、墳墓などを遺跡から見ていき、それらを支えたアンデス原産の食物、海での漁獲法や魚介を紹介している。
多岐にわたる視点からインカの姿を平易に、しかしながら内容の濃い解説になっている。多数の写真を載せているが、冒頭口絵以外はモノクロなのが惜しまれる。