『世界のピラミッド大事典』 |
Books アンデス メソアメリカ関係の本 『チャスキ』 59
号 2019年6月
『世界のピラミッド大事典』
大城 道則・青山和夫・関 雄二 柊風舎 2018年12月 639頁 15,000円+税 ISBN978-4-86498-064-7
ピラミッドと言うとまずエジプトの先端が尖った角錐状の大建造物が思い起こされるが、世界各地の古代文明でも目的、形、構造、材質が異なる様々なピラミッドが遺されている。 メソアメリカにおいては主に宗教儀礼を行う神殿で、エジプトのとは社会的機能や意味はまったく異なる。南米に遺るピラミッドは古代アンデス文明地域に限られ、ペルーとボリビアに遺る建造物は自然の地形を利用したり、石やアドベ(日干しレンガ)を積み上げた基壇の上に造られている。面積が比較的大きい頂上部にあった小型基壇上での空間では儀礼が行われた。
本事典はエジプトの他、60のメソアメリカの神殿構造物、50のアンデスの基壇、その他北米、日本、その他の地域のピラミッドについて、それぞれ場所・座標・規模・建造年代を示し、その歴史、注目すべき構造物、意義を写真、平面図とともに概説している。エジプトを中心としたアフリカ大陸を古代エジプト学の大城駒澤大学教授、メソアメリカをマヤ文明学の青山茨城大学教授、南米のアンデスを国立民族学博物館の関副館長と、それぞれ3地域で多大な研究成果を出している考古学者が、世界各地に点在するピラミッドを、時間と場所を越えて網羅的に詳細な情報を集大成して纏めた、座右に是非置いておきたい我が国初の「ピラミッド学」書と言える画期的な事典である。
〔桜井 敏浩〕